「っ……」


ヘタレのくせに、生意気………。

わずか数センチの距離で笑う桃矢に、わたしは全部の熱を持っていかれた。


心臓は破裂しそうなほど暴れていて、下手したら桃矢にまで聞こえてしまいそう。


単純な自分が憎くらしい。

こんな簡単にドキドキしてたら、すぐに奪われちゃいそうなんだもん。


「じゃあ、僕はそろそろ戻りますね」


すると桃矢は、わたしをドキドキさせたままベッドから足を下ろした。

こんなに桃矢でいっぱいにさせておきながら、逃げるなんてずるいよ。


「とっ…………」


どうにか引きとめようとしても、上手く声がでない。


そして結局何も言えないまま、


「お邪魔しました」


彼は平然とした顔で部屋の扉を閉めた。


ーーーバタン