ベッドの脇に置いてあった小物入れから、ナズナのネックレスを取り出した。
「プレゼント、嬉しかったのにな……」
地味でヘタレで臆病な桃矢が、わたしは好きだったのに。
なんで急にあんなことを言ったんだろう。
わたしが先輩に取られると思ったから?
わたしが先輩に夢中すぎたから?
理由なんてわかんないけど、わたしの知らない桃矢がいたことにショックを受けた。
ずっと一緒にいたのに気づかなかったなんて、鈍いってもんじゃないよね。
バカバカ言ってたわたし自身が、なにも知らない大バカヤローだったんだ。
「なにさ、こんなものっ…………!」
持っていたネックレスを握りしめ、ゴミ箱に向かって手を構えた。
いらない。捨てちゃえ。
楽になれるかもよ。
「っ……」
頭の中ではそう唱えているのに、体はピクリとも動かない。
動くどころか力は抜けて、握りしめていたネックレスがするりと落ちた。