「なぁ、俺を選べよ」
「っ…………」
だから、そんな甘い言葉でわたしの心を揺さぶらないで。
単純だから、不覚にもドキドキしちゃうの。
セットもしてない寝癖がついたままのボサボサな髪の毛と、目元まで伸びた長すぎる前髪。
私服もダサいし、どう見たって理想の王子様じゃないのに。
「なずな……」
すると、桃矢の顔がゆっくりと近づいてきた。
もしかして、またキスでもするつもり……!?
「いやっ!」
ーーードンッ!
怖くなって、思わず桃矢を突き飛ばした。
「んだよ……」
「あっ、ごめ……」
謝ろうと思って顔を上げたら「照れちゃって」と、憎らしく笑っていた。