「あ、のッ!!」



私の声もむなしく、男の子は何も言わずに奥の方へ入り込んでしまった。

不思議な人だなぁ。

そして、今までの経緯を思い出してみる。

あの人、誰だ?

何の関係もない私を助けてくれたのか?



私、を?



……うわぁ。

助けられちゃったよ。

知らない男の子に。


なんだかわけの分からない感動がこみ上げる。


男の子に助けてもらうなんて初めてだ。

助けたことはあるけれど。


中学じゃ、恐れられるだけの私。


それが



助けられるようにまでなった!!

ビバ一般人!!



でも、結局お礼は言えなかった。

せめて制服が分かれば良かったのに。



それも全部このオヤジのせいだ!!


私はセクハラオヤジをニラみながら、高校までの十分間電車に揺られた。

もう、セクハラは誰もしてこなかった。





満員電車なんて、大っ嫌いだ。