「いってえ!!」



爆発寸前の私の後ろで、悲鳴が聞こえる。

たぶん、私のケツを触ってたオヤジ。

周りの人もどよめいたり、笑ったりしている。


何が起こったの?


慌てて振り返ってみる。

そしたら、やけに背の高い男の子がオヤジの手首をひねりあげていた。

それはもう、素敵な笑顔で。




ケンカ慣れしてるな、この人。

瞬時に判断できた。


だって私、元番長だもの。




「オジサン、次やったら警察だヤ?」



笑顔だけど、声に凄みがある。

低くて、よく通る声。


だけど……。


関西弁?

こんな田舎の、しかも関東に?

いや、何か絶対おかしいと思う。



男の子は、素敵な笑顔のままひねりあげている。

手の力はゆるんでいない。

周囲の視線とどよめきに観念したのか。

オヤジは、苦しさと悔しさをにじませた顔で謝った。

男の子に。


あれ?


普通、私に謝るものじゃないのか?


でも、それは今は置いとく。

早くお礼を言わないと……。