先輩に出逢って、先輩を知り、先輩に触れて気づいたことがたくさんあった。


魅惑的で儚く、美しい羽根を持った蝶のような先輩を追い掛ける内に、必然的に芽生え、加速した恋心。


いつだって優しく、いつだって温かい先輩のこと。


知るほどに惹かれて、知るほどに手の届かない存在なのだと思い知り、その度に打ちのめされた。



「…………雪だ、」



呟くように言葉を零した蓮司に促されて宙を見上げた。


見上げた先、真っ白に染まった空からは、ゆっくりと舞い落ちる雪の花。


優しく掌に触れたそれはまるで、いつだって冷たい先輩の手のようで、私はたったそれだけでもう一度、前を向ける気がした。