俺の言葉に、悲しげに眉尻を下げるアキを見て、静かに口元に笑みを作った。


アキが言いたいことも、アキが俺と栞を心底心配してくれているのもわかってる。


だけどこれは、自分で決めたことだ。


停学になっている一週間、相変わらず音のないあの家で考えて出した答え。


大嫌いだったあの家で、俺なりに胸に刻んだ決意だ。


……昔の自分なら、そんなこと到底出来なかっただろう。


音のない家の中で、たった独りで蹲り、寂しさだけに溺れていた自分には到底辿りつけなかっただろう答えと決意。


幼い頃に自分が感じていた、途方もない不安と孤独。


けれど今は、俺にとって心落ち着く、ゆっくりと物事を考えるための場所に変わっていた。


いや……そうじゃない。“変わっていた”、じゃない。


栞が、“変えてくれた”んだ。


栞が、あの家に温もりをくれたから。


だからあの場所で、俺は俺なりの答えと決意に辿りつくことが出来た。