俺を奴隷にした日野ちゃんが。
恥ずかしそうにワンピースの裾を引っ張り太股を隠す日野ちゃんが。
俺の胸ぐらを掴み睨み付ける日野ちゃんが。
颯太さんの死をいまだ認めることができていない、日野ちゃんが。
……頭から離れてくれない。
「何見てんだよ」
「いやあ面白くて」
「……さっさと写せよ宿題」
「ああ!そうやった!」
やばいやばい、そう言ってまた机に向き合うあおいの背中を見つめる。
明日からまた学校が始まる。
明日からまた、日野ちゃんに会える日々の始まり。
だけど颯太さんの死を知ってしまった今、日野ちゃんと同じ態度で接する自信はなかった。
嘘をつくのは得意分野なはずなのに、俺は日野ちゃんの前では、とことん駄目な男になると、もう薄々気付いていたから。