猫の頭を撫でながら「またね」と告げてから、奥から聞こえたな。と、私は更に裏庭の奥へ。

こっそり遠くの木の後ろから覗いてみると、日野くんと、知らない女の子。

女の子は薄ピンクの封筒を日野くんに渡した。


「私、日野くんが好きなんです !」


……すごい。
他人の告白シーンなんて初めて見た。


「……ごめんね。気持ちは嬉しいんだけど」
「駄目ですか……?」
「……ごめん」


女の子は悲しそうに眉を下げる。
日野くんもすごく申し訳なさそうに眉を垂れ下げている。

丁寧な振り方だ。やっぱり優しい日野くん。
本当に完璧な男だな。と、感心感心。


女の子は潤んだ目で小さく頭を下げてから、その場を足早に去る。

木の影で覗いていた私とすれ違ったことなど全く気付いていなかった。


女の子の背中が見えなくなってから、またさっきの方に振り向く。

一人残されてた日野くんが突っ立っていた。


……なんて野次馬根性丸出しで覗き続けてた私も悪いんだ。だけど。




「あー、めんどくせぇ」


日野くんの一人言。

……私は自分の耳を疑った。