ーーーーー....


「...あ」


暖かいそよ風に何気なく、桜の木の方を
見ると、彼の姿がそこにはあった。


けれど決して、一人でいるわけではない。



「ーー樹(いつき)先輩!」


...可愛らしい女の子も一緒だ。


「..ゆ、ず」


親しげに下の名前を呼び合う二人にズキッと
心が痛くなった。


どこか切なげな彼の声は、春風に運ばれ
私の鼓膜を揺らす。


二人は...元恋人同士。


樹は柚ちゃんに未練があったみたいだし、
その様子だと柚ちゃんもーー