「君、此処が何処だか分かっているのかね?
此処は炎一族族王家の方々が住む城だ。
そこにどうやって……」


「どうした」


セルトとヒーレンはアダルスの案内で、
城の正面玄関へと来ていた。


正面玄関は通常、王族の外出の際に使用される。
ゆえに、厳重な警備の中でも特に力を入れられている。


なのに。


「陛下」


セルトの声に、玄関に集っていた大勢の侍従侍女たちが振り返り、
彼に敬意を払った。


「どうした」


二度目に問いに、侵入者を責めていた壮年の男が口を開いた。
彼は確か、侍従達の中でも高位に居たはずだ。


「実は……、女が、入り込みました」


「聞いている」


セルトの即答に、壮年の男は驚いた模様だった。
瞠目し、しかし彼は続ける。



「警備の者たちを倒して、この鍵の掛かった大扉を開いて
入ってきたと言っています。
実際、外には幾人かの警備員が、気絶していました」


セルトは心の中で舌打ちした。

この、馬鹿め。

奴らは族王家のある城一つ、守ることが出来ないというのか。


相手は女だ。力は弱い。そんな女に、幾人もの大柄な男たちが
負けた。

それはセルトにとって、屈辱でもあり、
その一方で、大柄な男たちを倒した女に興味を抱いているのも、
また真実だった。


「で?その女はどうした。
……まさか、逃げたとでも言うのではあるまいな」


「いいえ!!ただ、その……」


男はしおしおと、セルトから視線を逸らす。
セルトは眉を吊り上げた。


こいつは俺をからかっているのか。