今まで雪を降らせていた雲が晴れて、
雲間から月が覗いている。


重要な会議が終わり、
議員の誰かがそれを知らせた。


会議室が歓喜にざわめく。
それも当然だった。



「おお良かった……。
危うく、今日も屋敷に戻れんかと思ったわ」


肩をこきこき鳴らしながらぼやく壮年の男に、
彼の隣の男が同意した。


「真。さあさ、早くこの寒い部屋から出ましょうぞ。
凍え死んでしまうわ」


彼らは恨みがましく、背後の扉を睨みつけた。
先程、議会の中心となった男が出て行ったところだった。


今から七年ほど前。

先代の族王の死により、
新しい族王が即位した。

それからと言うもの、
今まで設置されてあった冷暖房は、族王の
「経費削減」の一言で、全て撤去されてしまった。



「しかしながら―――」


壮年の男が、呟いた。


「陛下のあのお美しさは、
一体どなたのお血筋によるものなのだろうか」


「大臣、そのお言葉は散々聞かされましたぞ」


もう一人の男が苦笑して言う。

大臣と呼ばれた男が、大声を立てて笑った。


「致し方あるまい。私はまだ経済大臣に就任してから日が浅い」


だから、と彼は続ける。


「―――まだ、陛下のお美しさに慣れんのだ。
……あの、氷の王子と呼ばれた御方のお美しさが、な―――」