―――
―――――


雪が、降っている。
それもごうごうと、轟音を轟かせながら。


豪雪の降り続く山の中、彼女はよろよろと歩いていた。


裸足で、その足は刺すような冷たさの雪に埋まり、
皮膚が所々裂けていた。

血が滲み、足の感覚はとうに消えてしまった。
それでも、彼女は逃げなければいけなかった。


時々背後を振り返りながら、彼女は歩く。
最早寒さを感じる神経すら、麻痺してしまっているようだった。


不意に、雪が止んだ。


彼女はそれに恐ろしさを感じ、身震いした。


雲が晴れ、月が現れて、辺りを照らしだす。
それすらも、恐怖だった。


月が、歩き続ける彼女を嘲笑うかのように、
彼女の身体を照らし出す。


痩せた身体。
紙の様に白い肌は、今や青白くなっている。



「―――お願い」


彼女は、月に懇願した。



「お願いします」



それ以上、私を照らし出さないで。