Dreamcatcher

その日の夜。



悪夢なんて見なかったけど、代わりに初めての体験をした。



金縛り。



怪物の次は幽霊？



そんなこと思ってると、あの、銀ちゃんの歌声がした。



…耳、ふさいでくれてる。



しばらくすると、ふっ、と体が動くようになった。

「銀ちゃん、ありがとう。ねぇ、今のもナイトメアなの？」



「わからない。けど、金縛りをするナイトメアなんて見たことない。でも、新種だったら…」



「幽霊、とかじゃないの？」



「幽霊なんかこの世にいるかよ。そんなもん信じてんのか。本当にバカだな。」



久しぶりに暴言吐かれた。



ていうか、精霊さんに言われたくないな。



「銀ちゃんだって似たようなもんだよ。」



「なんだ、それ。いない奴と一緒にすんな。
…今日はもう寝ろ。俺が調べとく。」



そう言うと、銀ちゃんは歌い出した。

別れ

それから1週間、また悪夢を見なかった。



金縛りがなんだったのかもわからない。



あ、普通に疲れてたって可能性もあるのかな。



学校から家に帰ると、銀ちゃんがベッドに座っていた。



「え、銀ちゃん？昼間も動けたんだね。初めて知ったよ。」

「ああ、お帰り、美優。」



「ただいま…。」



なんか違和感。昼間に会うの初めてだからかな？



「美優、この間の金縛りのことだけどな…。」



「あ、言おうと思ってたんだけど、金縛りになったのって、疲れてたからかなって思って…。」

「俺もそれを言おうと思ってたんだ。一緒のこと考えてたんだな。」



「ねぇ、今日の銀ちゃん、雰囲気違う。なんかあったの？」



「別にいつもと一緒だよ。」



「いや、でも…」



「うるさいな。ちょっと黙ってろよ、アホ。」

…アホ？



この人、アホって言ったよね？



「…あんた、誰？」



「は？美優、何言ってんだよ。俺はドリームキャッチャーの精霊で…」



「違う。あんたは銀ちゃんじゃない。銀ちゃん、アホって言葉嫌いって言ってた。でも、今アホって言ったよね？あんた、誰？」

「ふっ、もうバレたかー。少なくとも1週間はバレない自信あったんだけどなー。」



「やっぱり…。あんた誰？」



「俺は、君の大好きな銀ちゃんが退治しようとしてる、新種のナイトメアだよ。」



「なんで、銀ちゃんに化けたりしたの…？」



「君のこと油断させて、喰べるためだよ。」

喰べる…？



「あれ？銀ちゃんから何も聞いてないの？ナイトメアに憑かれた人間は、ただ死んじゃうだけだけど、喰われた人間は、ナイトメアとして生まれ変わることができるんだ。だから、君のこと喰べようと思ってさ。」



そう言い終わると同時に、新種のナイトメアがこっちに向かって歩いてきた。



「ぎ、銀ちゃん！！」

「残念だね…。銀ちゃんは助けに来ないよ。今頃、罠から抜け出そうと必死にもがいてるんじゃないかなぁ。」



「残念なのはそっちだな、ナイトメア。」



「銀ちゃん！！」



「え、お前、どうやって…。」



「さぁ、どうやったんだろうなぁ？」