鵜呑みも何も彼女が話した話は真実だろう?
現に、奏多は否定もしなかった。

………いや、もしかしたら否定できなかったのかもしれない。

だとすれば、俺は奏多を裏切った?何があっても傍にいると奏多に言った。
それを破った事になるのだろうか。


「伊織、」

「そいつが言う事が全てだとでも思ってるのか?あの話でお前が矛盾を感じないなんておかしくないか?」


冷えていた視線に幾分か色が戻った伊織の言葉は俺の思考回路を正常に戻してくれた。


「美樹ちゃん、あの時の話が全部真実なのか…俺は君を信じて良いのか?」

「あ、…当たり前じゃん!奏多が全部悪いんだからっ、奏多がいなかったら幸せになれてたかもしれないのに!」


揺れた瞳がもしかしたら何よりの証拠なのかもしれない。

真実を知りたかった。それで俺が何かを失おうと、このまま奏多を苦しめたくはなかった。
口を開きかければ、閉ざされた扉が外れてしまいそうな勢いで開き、眉を寄せ、目を吊り上げた女性が立っていた。奏多と一緒にいた奏多が親友だと話してくれた子だろうか。


「…あなたが拓海さん?」

「あ、…あぁ。」

「どうしてですか。どうして奏多を信じてあげられないの?あの子…あの時あんなに苦しんだのに!なんでまたあんな顔させるんですか!」


涙を零しながら怒鳴る奏多の親友は俺から視線を外すと同時に美樹ちゃんへと詰め寄っていた。


「アンタ…いい加減にして!奏多が何したって言うの?あれだって全部アンタが蒔いた種じゃない!なのにっ…奏多が言い返せないのわかっててなんであそこまで追い詰めるような事…」


喚き散らし、泣き崩れる目の前の女の子が奏多に見えた。

奏多が一方的に悪いとしか聞いていない。あの時は話しの流れを聞いても奏多が一方的に悪いと、奏多だけが悪い感じていたはずなのに、

なぜか今はそうは思えない。