カラン、と小気味良い音に出迎えてもらいショットバーに入ればちらほらと見える元同級生。
「いらっしゃい、奏多ちゃんに妃毬ちゃん。」
「お久しぶりです。マスター」
「どうも。ちょっとマスター聞いてよ!奏多に先越されそうなの!しかも玉の輿。」
店に入るや否や、すぐに大きな声を出した妃毬にマスターもちらほらと見える元同級生達も目を丸くしている。
「えぇ!葵ちゃん結婚するの?」
「あ……うん、まぁ…」
詰め寄る元同級生で元クラスメイトだった鈴木さん(だったかな)に詰め寄られて私は苦笑いしか出てこない。
「おめでとう、奏多ちゃん」
「あ、ありがとうございます…マスター」
「奏多ちゃんの相手どんな人か気になるな。」
彫りが深い、それでも綺麗な顔立ちをしたマスターは確か50代。
マスターは美樹の事を知っていて、落ち込む私を妃毬とよく慰めてくれた。
とは言っても、ただ黙って話を聞いてくれていただけだけど。
「あれよ、確か…PIECEの社長。」
「もしかして、如月 拓海?」
PIECE、とは会社の愛称。正式名称はもっと長いけど、実は私もよく覚えていなかったりする。
とは言え、パリの本社は英語の名前だけど、日本にある支社は日本語の名前。
ややこしいから覚えなくて良い、なんて拓海さんにも言われていたから覚えていなかったりする。
「マスター…拓海さんを知っているの?」
「あぁ、拓海と伊織もよく此処に来ていたよ。」
驚いた。
まさか、高校の同窓会で拓海さんや部長を知っている人がいるなんて思わなかったから。
世間は狭い。