ただ、君の笑顔がみたいんだ。
君が笑顔で、俺の隣にいるならば何もいらないから。
「円香!!」
「……拓海?なに、そんなに慌てて…」
「奏多は!」
会社のトップが慌てるなど言語道断だ、それはわかっている。
けれど、今はただ君に会いたかった。会ってただ抱きしめたい。
「葵さん?まだ戻ってないわ。どうしたの?」
「……由里が来たんだ。」
由里、と聞くと円香は不機嫌そうに眉を寄せた。そして、すぐに顔を赤くさせ、俺の腕を掴み歩きだす。
周りには社員が何事かと見ていても今はそんなのを気にする余裕なんか微塵もない。
「あの女っ…まさか葵さんに何か言ったわけじゃないわよね!」
「わからん…由里は詳しくは言わなかったし俺も聞かなかった。」
「っあんた!………とにかく…葵さんを探しましょう…あの女に会ったとしたらきっと泣いてるわ。」
泣いている、ただその一言で胸が痛くなる。
ほんの数十分前まで腕の中にいた愛しい彼女。それが、泣いているかもしれないと言うだけで息の仕方すらわからなくなるんだ。
「拓海、泣かせたくないなら探しなさいよ!」
「っ…あぁ、わかっている。」
今までなにをするにも人目を気にして生きてきた。
だが、今はそんなもの気にしていたくはないんだ。
俺は、君の前でだけはただの一人の男でいたいんだ。
君だけは、この手でどんな事からも守り抜きたい。
それは、許される願いなのか