早足でエレベーターに乗って、一番上の32のボタンを押す。
二週間ぶりに会える初恋の人に口元が緩む。

エレベーターは最上階へとたどり着く前に、一度止まり、人を乗せる。


「あ、ウサギちゃん。」

「………お疲れ様です。」


あからさまに眉を寄せた私に苦笑する、私にウサギなんてあだ名を付けた英部長。


「なに?逢い引き?」

「違います!」


あからさまに面白がる英部長からプイッと顔を逸らせば英部長は可笑しそうにわらうから余計に眉を寄せてしまう。


「拓海、喜ぶよ。全然会えないって愚痴ってたからなぁ。」

「え……」


拓海さんの名前に反応した私に苦笑を浮かべた英部長は私の頭をくしゃくしゃと撫でてあまり見ない柔らかい笑みを浮かべていた。


「拓海の事、頼むね。奏多ちゃん。アイツ、クールな見た目に反してかなり寂しがりだから。」

「英部長…」


ウサギちゃん、と呼ばない英部長に私は小さく笑って、元気よく返事をした。


「君がいたら拓海は安心だな。なんせやっと片思いが実ったんだからなぁ。」


ぽつりと呟いた英部長の言葉に首を傾げた。
やっと?片思い?
あれ?私と拓海さんはあの日が初対面なはずだけど…。


「あー…もしかして拓海から聞いてない?」

「…何をですか。」


眉を寄せる私に、まずったなぁ、と頭を掻きながら苦笑する英部長。とりあえず、やっと実った片思い、って言うのは気になる。