おじいさん、もとい、会長よりも後ろを歩いて着いた場所はビルの最上階。しかも一番奥。
「あ、あの…」
「さぁ、入って。」
ぽんと背中を押され入った部屋は社内でも入る事は許されない場所。
会長室。
そんな場所は恐れ多いと動けずにいた私をいかにも高そうなソファーへと座るように言う会長。
会長に抗うなんてできるはずのない私は物凄く浅くソファーに腰を掛ければ柔らかい弾力で私を迎えてくれる高級ソファー。
「さて、先程は本当にありがとう。」
「え…やめてください!」
たかが小娘の、しかもただの平社員の私に頭を下げる会長。
そんな事させられるわけないと慌てる私に会長は頭を上げ、優しく笑っていた。
「こんな都会で君のような優しい女性に出会えるとは本当に嬉しい。それに、我社の社員ときた…私は誇りに思うよ。」
「おじ…会長からそんなお言葉…本当に有り難く思います。」
「いや、私の事はおじいさんで構わないよ。君のような孫がいればどんなに嬉しいか。」
そう言い笑う会長はただのおじいさん。ただ、肩書きがあると言うだけで根本的な物はきっと私となんら変わりはないと思う。