「っ申し訳ございません!会長におじいさんだなんて…失礼いたしました!!」
サァ…と血が下がり、慌てて深く頭を下げれば少し焦るようなおじいさん…いや、会長の声。
「いや、良いんだよ。葵くん、頭を上げなさい。」
「本当に申し訳ございません…」
本気で泣きたい。
知らなかったとは言え、会長をおじいさんと呼び馴れ馴れしい態度を取ってしまった。
「気にする事などない。それよりも…これから時間はあるかな?」
「え?あ……仕事が…」
円香さんに仕事を押し付けたみたいになってしまった。
そのお詫びに早く経理課に戻りたかった。
「柏木には俺から言っておくからウサギちゃんは会長と行きなよ。」
「……は、い…」
ぽんぽんと英部長に肩を叩かれ、小さく頷いてから扉を見ればすでにそこにはおじいさん…ではなく、会長が扉を開けて私を待っている。
まさか会長が自ら扉を開けて待つなんて…私は大慌てで会長の元に行き、また謝れば気にしていないと笑顔で返されてしまう。
「すまないね、では行こうか。」
「は、はい!」
レディーファーストだと背中を押されながら、ダンディなおじいさんはどこまでも紳士な人なんだ、と頭の片隅で考えてしまっている自分がいた。