「そりゃ良かった!

あ。あそこに座って食べるか?」


ブレイクが指さしたのは2人用のソファ。

マコは静かに首を横に振り、「ううん」と言ってからリボンを再びクッキーの袋に結び直し、ブレイクに差し出した。

彼は驚いた表情をして「え?」と小さく声を出した。


「どうしたんだマコ?

全部食べていいんだぞ」


再びマコは首を横に振ると「ダメだよ」と答えた。

さらにブレイクは驚き、「何でだ?」と聞く。


「だって、それブレイクに向けて作られたお菓子だもん。

ブレイクが食べるべきだと思うの。

だから、もういいの」


「!」


今時の若い子はそんなことを考えているのか、と思いながらもマコを見つめる。

彼女は視線をブレイクの目にしっかりと合わせて、それからニコリと微笑んだ。


「ッ...」


『お兄ちゃんありがとうね』


彼の頭がズキリと痛み、7歳ぐらいの少女が頭の中に浮かび上がった。

その少女とマコを思わず重ね合わせてしまう。

しかし、頭を左右に振って現実を見つめ直した。

そして、マコが差し出したクッキーを受け取り頭を撫でた。


「そっか。

じゃあ、これは俺が食べるな?

でも、次に腹が減った時は本当に...」


「大丈夫だもん」


グゥ〜。


口で言っていることと違っている事が起きているのだが、あえてそこには触れないようにする。


「じゃあ、鍵でも探しに行くか」


そう言いながらウエストポーチに再度クッキーを入れている時、ポーチから何かが落ち、床にカシャンと金属が落ちるような音が聞こえた。