私は振り返ることなく、その声をシカトした。
「おい、シカトしとんなよ」
ガンっと軽く椅子を蹴られ、耳元で囁かれる。
簡単に言えば、イジメられている。
ただ、この人たちは先生にバレることを恐れているのか、クラスを巻き込んだりはしない。
ただ、こうやってコソコソと陰湿なイジメを行っている。
…先生にバレたくない他に、クラスを巻き込まない理由がある。
それが…、
「実はこんなところに隠れてましたー!」
目の前の子の襟元からトランプを抜き取りキメる、クラスの人気者、吉野 美尋の存在。
いつも通りお得意のマジックを披露し、自慢げに笑う吉野さん。
そんな彼女とは程遠い場所にいる、地味子の私、白雪 美乃。
ちなみにどうでもいいかもしれないが、席も遠い。