吉野さんには私が見えていないからか「そうなんだ」と呟いて、再びニコリと笑った。
「隠しても、無駄だけど」
笑顔には似合わない冷たい声。
声が冷たいと笑みさえ冷たく見えて、まるで人形みたいだと息を飲む。
「ごめんね、初めから聞いてたから」
その謝罪は、私ではなく目の前の女子たちに向けられていた。
だから、誤魔化しても無駄だと。
言い訳しても無駄だと諦めたのか、女子たちは次の作戦に出る。
「でもさ、こいつ地味だし、みひろんには似合わないって」
そういうふうに言葉で惑わして自分の方へもっていこうとする。
そんなことしなくても、吉野さんが私なんか相手にするはずないのに。
