聞き覚えのある声、そこに仁王立ちする人物に、思わず口にあるものをごくんと飲み込んだ。

…まさかとは思っていたけど、本当にあの先輩からの呼び出しだったとは。

「昨日は、ありがとう。アイツらから何かされてない？」

昨日の冷たい感じとは打って変わって、目を細めてふわりと笑う先輩。

なんだかイメージと違いすぎて黙ってクビを横に振ると、安心したように笑った。

「そう、なら良かった」

ホッと胸をなでおろした先輩。

私のことのはずなのに、それほど安心するのがなんだか不思議で。

「…あの、ありがとうは、私の台詞だと思うんですけど…」

恐る恐るそう言うと、先輩はキョトンとして私を見た。

相変わらず鋭い目つき。

でもそれはわざとじゃなくて、そういう顔つきで、きっと勘違いされやすいだけなのだろう。

それから、思い出したようにして目を伏せると、「その、」と言いにくそうにした。

「ほら、私ってこんなんだし、冷たい奴だってすぐ距離おかれるんだけど。

白雪さん、昨日私のこと、サバサバしてて好きだって言ってくれたでしょう？」