放課後、俺が図書室の本の整理をしていると、ガラガラガラという音と共に、古川浩太が入ってきた。
「どうしたんだ??もう、下校時刻は過ぎてるぞ。」
俺がそう言うと、伏し目がちな少年はボソボソと話し始めた。
「実は、先生に相談があったんです。僕、夢というか、やりたいことがあるんですけど、それを実現するためになにをしたらいいのかわからなくて...」
「やりたいことっていうのは?」
俺がそう問いかけると、彼はうつむいて、
「言いたくありません」
と言った。
そんなんじゃ、アドバイスなんてできないなぁ
そんな俺の心を読み取ったのか、少し慌てた様子で、
「人に知られるのが嫌なんです。」
と続けた。
俺は、彼のことをなんだか不憫に思い、アドバイスをした。
「夢を実現させるためには、自分から行動しないとダメだ。結果なんて後から付いてくるものだから、とりあえず、今の自分ができることを、片っ端からやっていけばいいと思う。」
俺がそう言うと、浩太は目を輝かせ、
「ありがとうございました。」
とお礼を言って去っていった。
次の日の朝、
「おはよ...」
俺は教室に入った瞬間、愕然とした。
昨日まであった生徒たちの笑顔はそこになく、
あるのは血生臭い匂いと、無数の死体。
そして...
「おはようございます、先生。」
古川浩太がいた。
浩太の手には、どす黒く染まった包丁がおさまっていた。
「まさか、お前が...」
「はい、僕がやりました。だって、先生、昨日言ってくれましたよね。『できそうなことを、片っ端からやっていけ』って。僕の夢は、バカな奴らの死体をたくさん見ることだったんです。先生が背中を押してくれたおかげで、夢が叶いました。ありがとうございました。」
俺には、こいつの話していることが理解出来なかった。
本当にこいつが、大人しくていつもひとりぼっちだった、古川浩太なのか。
...震えている場合じゃない。
早く警察を呼ばないと。
俺が携帯を取り出した瞬間、浩太によってそれを阻まれた。