『今宵は月が一番妖力を光らせていたのでな、丁度いいからと思って』

「お、お父さ、ん....?」

 初めて父親の名前を呼んだからだろうか、少しマリアはぎこちない。

『おおまりあ!会いたかったぞ~!』

 王はタウイの姿でマリアを抱きしめるために走って抱きしめ、頬ずりをする。
 初めて親子で対面したというのに、まりあはげっそりした顔で必死に離そうともがく。

 ....国王って、こんなだったか?

『おいしおんとやらよ!今までの行い見させてもらった。大儀であった!』

 まりあから離れて今度は俺と対等に向き合って話し出す。
 その顔は、実に父親らしくて王の威厳はまったくない。

「...ありがたく」

 位が今となってはなくなってしまったが、目上なのは確かで。
 自然と頭が下がる。

 りおんはまりあとひそひそ。

『しおん。お前に、娘を守る覚悟はあるか?今まで人を殺してきたお前に、命を授かるということがどういうことかわかっているな?』

「...俺はまりあがいれば、それだけでいいと思える。他の男に取られるくらいなら死んだ方がまし、ですから」

 慣れない敬語。
 だけど、目を見合って真剣な表情から一気に笑顔に変わる。

「まりあは、俺の大切な奴なので」