右手を握りしめて歩き出した。
 一歩、二歩...。

 だけど、何故か足が止まってしまう。

「....んだよ。あいつむかつくんだよ」

 男と二人でいるのがむしゃくしゃして、思い切りドアを開けた。
 
「こいっ!」

「えっ!?」

 まりあの手をつかむと、その場から一緒に立ち去った。
 小さくて、冷たい手が妙に愛らしい。

 なんだよ、なんっなんだよ!

「ちょ、しおんどこいくの!?痛いってば、離し—」

「うるさいっ!」
 
 まりあを引き寄せて、うるさい口にキスをする。

「んっ?!」

 こいつの唇、柔らかいんだな...。

 頭をがっちりと押さえて離れないようにした。
 ...あいつに、見せつけるために。

「...あ....」

 男の声が小さく聞こえた。
 走り去っていくと、まりあは俺の足を踏んずける。

「いっ!!?」