車内は、ほんのりと芳香剤の香りがし、洋楽が流れている。 中川は片手でハンドルを持ち、もう片方の手で、煙草を吸う。 なんとなく、その姿に男らしさを感じた。 「ねえ、センセ?何も聞かないの?」 中川にぶつかったときのあたしの顔は、涙でぐしゃぐしゃだったはずだ。 誰が見ても、何かあったと分かるだろう。 だけど、中川が言ったのは、"振られたのか"の一言。 この男なら、絶対に何か聞いてくるはずだ。