彼女は、僕が初めて愛した最初で最後の人。
君と約束したこと、僕は今から果たすよ。

君は、約束を果たさない人は嫌いと言っていたからね。









春。世の中は出会いと別れの季節ということもあって、賑やかだ。
笑う者もいれば、泣く者もいる。
僕は両者どちらでもなかった。
笑いもしなければ、泣くこともない。そんな人生をつまらないとさえ思わなかった。
何故人は笑い、泣くのか。そればかりを考えている。

「桜…」

吹く風に乗って踊りながら、舞う桜はなによりも美しく見えた。
高校への道のり。今日は入学式だ。皆心弾ませ期待と不安と、たくさんの思いを持って挑むであろう。

緩やかな坂を上って、高校へ向かう。
大きく書かれた入学式という字は、僕をうんざりさせた。


着いて、入学式が始まる。
普通の、ごく普通過ぎる入学式。長い校長の話を聞き、お祝いの言葉をもらい。後は新入生の代表の言葉を待つだけだった。

「新入生代表、神崎唯さん」
「はい」

黒髪の長い髪の女が、壇上へと上がる。正直、どうでもいい。早く終わって帰りたい、そんなことしか考えていなかった。

「皆さん、こんにちは!新入生代表、神崎唯です!」

僕の、嫌いなタイプ。さも、出来ますよ、みたいな感じ。大っ嫌いだ。

「私がこの学校へ来た理由は、ある人を探しに来たからです!」

どうでもいい。てゆうか、今ここで言う必要はあったのだろうか。周りがざわつく。ああ、うるさい。

「名前は、坂本竜二くん!知っている方がいたら私のとこへ教えにきてください!!それを言いたくて今日は新入生代表として挨拶させていただきました!あ、挨拶じゃないか…とにかく、よろしくお願いします!」

え、その名前…俺なんだけど。あ、いや俺にはあの子見覚えないから同姓同名がいるのか。迷惑だ。何故同姓同名がわざわざ同じ学校にいるんだ。きっと俺じゃない。そう言い聞かせて入学式の終了を待った。