「…何だ…?」
「お前から呼びだすなんて珍しいな」

昼食後、氷室兄弟を食堂の裏に連れ出す。

「えっと…」

やっぱり恋愛慣れしていないからだろう、恋バナをしようとすると、口を閉じたくなってしまう。しかし葛藤の末、言いたいことを言うことに成功した。

「…二人とも、どっちがどっちを好きなんやっけ?」
「…どっちがどっち…?」
「映奈と若奈。…何かややこしいから、よう分からんようになってもうて…」
「何だ、そういうことか。オレが映奈で、聖都が若奈だけど…それがどうかしたか?」
「その…どういう所を好きになったん?」

こういうことを聞いていいのは、本来当事者同士の間だけなんだろう。そう思いながらも質問できたのは、私も当事者だという意識があったからか…。

「…それはまた難しい質問だ…」
「どういう所って言われてもな~」

聖都はともかく直都まで悩むということは、この質問はそれほど難しいということを如実に表していた。

「…詩音は…何故こんなことを聞くんだ…?」
「ふぇ?」

質問を質問で返されたことに加えそれが突然だったので、間抜けな声が出てしまった。

「確かに、お前当事者じゃないのに何でだ? 部屋が二人と同じだからって、そんなに首突っ込むこともないんじゃないか?」
「あっ…それは…その…アレやねん…」
「…詩音…?」
「何か隠してるのか?」

隠しているのは事実だけど、それを言えてしまうほど正直者じゃなかった。