ピシッと、ひびの入る音がした。天井だ。
祥之助が懐中時計を掲げた。
黄金色の両眼が爛々《らんらん》と光っている。
ニタリと笑う口が開いた。声が回復している。
「体感時間にして、残り一分か二分ってところかな? この女、リミットまでの時間は長かったよ。もっとさっさと壊れ始める人間のほうが多い。
さて、時間が来たら、ボクらは外に出る。ほら、無駄話をしているうちに、もうすぐその時間だよ、阿里海牙センパイ?」
近寄ってきた祥之助がぼくに懐中時計を突き付ける。
暗転した文字盤に、ごく細い一条の黄金色。
ぼくは懐中時計を受け取らず、祥之助の胸倉をつかんで持ち上げた。
怒鳴り付けたいのを押し殺して、低く尋ねる。