祥之助の足を、ぼくは踏み付けた。涼しい笑顔で告げる。



「きみはメルヘンの再現を演じたことがあるようですが、本末転倒を自覚していますか?」


「痛い痛い痛いっ!」


「姫君に呪いを掛けた魔法使いと、眠りの呪いを解く王子の、一人二役。たいした道化ですね」



悲鳴がうるさいから、ぼくは祥之助の足を解放した。


祥之助が涙目でぼくを見上げる。



「おまえ、ボクに暴力を……!」


「振るいましたが、それが何か?」


「野蛮人!」


「テストの点数で競ってもかまいませんよ?」


「が、学年が違うじゃないか!」


「ぼくの一昨年の成績を、きみは去年、超えられなかった。そういう話なんですが」