高みの見物をされていた、というわけか。



「最低な趣味ですね」


【ほざけ、駄犬が】


「石ころの戯言《たわごと》に付き合う暇はない。要するに、核に到達するための条件は、この蓋をどけることと解釈していいんですね?」



蓋と呼んでみたけれど、密閉されている。


二種類の無機物で継ぎ目のない箱を構造させるなんて、どんな組成になっているんだか。



不意に、皮肉な気分が胸に差して笑いたくなった。


力学《フィジックス》の目を保ったままなら、ぼくがここまで来るのは無理だったに違いない。


ココロの矛盾にばかり意識が行って、大事なものを見なかっただろう。



祥之助が椅子に掛けたまま、伸ばした脚のつま先で、黒い直方体をつついた。



「やってみなよ。メルヘンのワンシーンを演じてみるがいい。王子が、眠れる姫君を目覚めさせるシーンだ」