「あれはあたしの日課なんです。ああして、プールの底から水面を見るのが好きなの」


今日は誰かに邪魔されちゃったけれど。


分かりやすい嫌味に、先生は案外あっさり、そいつは悪かったな、と言った。


「今度はそっちの番ですよ。二ノ宮先生」


臨時美術教師、二ノ宮海音(かいん)。


産休に入った常任美術教師の代わりとして、四月に赴任してきた。


結構かっこいいから、赴任当初はものすごい人気だった。


新卒だって話だから、二十二、三歳ってとこかな。


あたしの友達も『カノンちゃん』なんていって騒いでたな。


まったく接点がないから、実をいうと話すのも初めて。


ま、それはさておき。


「なんで先生はこんな時間に、こんなところにいるんですか?」


「六時ごろに目が覚めて、予定より大分早く学校に着いたらプールから水音がする。誰か遊んでやがるのかと思って見てみたら、丁度お前が沈むところだった」