あたしが泣きそうな顔をしてたから、合宿に参加しない理由を聞かないでいてくれたんだもん。


わざわざさくらに聞くわけがない。


あたしが、勝手に……海に入らないだけ。


「先生、さくらはなんて言ってましたか?」


「……菊池は、海が嫌いだと……言っていた」


顔を上げた先生は、でもまだ視線を合わさない。


「もうひとつ、言ってたでしょ。……親友が、海で死んだから……って」


視線を逸らしたまま、少しためらってうなずく。


気にしてくれてるんだって分かってるから、そんなに難しい顔をしないで欲しい。


「先生。そんな顔しないで。もう、三年も前の話なんです」


心底申し訳なさそうな顔をしてる先生。


「聞いてくれますか? あたしの話」


「……菊池。やっぱり話したくないなら」


「いいんです。……聞いて欲しいんです、先生に」


昨日、先生の絵を見たとき、びっくりした。


毎日水の中に潜って見る空のように、きらきら光って綺麗で……。


そんな絵を描く先生になら、話してもいいと思ったんだ。