腕を取ろうとしたあたしの手をやんわり拒んで、使っていない机を指し示す。


あんまりしつこく聞いても、多分先生は『大丈夫』しか言わない。


だったら、ちょっとでもご飯を食べてもらったほうがいい。


あたしはそう判断して、おとなしく先生の指示に従った。


それから、いつものように昼食。


……ううん、いつものように、とは言えないな。


ご飯は食べてくれたけど、ぜんぜんしゃべらなかったから。


本当に、どうしちゃったんだろう。


重箱を片付けながら先生を見ていると、不意に目が合った。


「菊池に、聞きたいことがあるんだ」


「聞きたい、こと?」


「昨日、峰が来て言ったんだ。……お前が、合宿に参加しないわけを」


……さくらが、先生に言った?


あたしが合宿に参加しない……海に行かない理由を?


「正直、お前と会った日から、なんで合宿に参加しないのか気になってた。でも、ほかの部員は海合宿行ってるって言ったときのお前が、なんだか泣きそうに見えたから。だから俺は、あえて聞こうとは思わなかった。けど……峰から聞いちまったら、どうしようもなく気になってな」


耳をふさげなかった俺を許してくれ、と頭を下げる先生。


そんなの……謝らなくて良いのに。


さくらが言ったのを、先生はたまたま聞いちゃっただけ。