峰も、俺の答えは必要としていなかったんだろう。


特に気にもせず、窓から外を眺めて独り言のように続けた。


「波音は、カノンちゃんとは正反対だ」
 

波音? それは、菊池のことか?


「菊池と、知り合いか?」


「波音とは中学校から一緒だよ。家も近いしね。カノンちゃんがここにいるって教えてくれたのも波音だもん。カノンちゃんこそ、波音のこと知ってるの?」


「ああ、ここに泊り込んだ初日からな。お互い、ひとり合宿の身だから」
 

自分の言葉に、はっとする。


菊池とは、数日前に知り合ったばかりだったのだ。


もっと前から知っているような気分でいたのに。


「波音は、毎年ひとり合宿してる」
 

視線の先には、菊池がいるんだろう。


峰の表情は見えなかったが、声の調子が変わった。少し低くなって、寂しそうな声音だ。


「なんで、ひとりなのか聞いた?」