進路は聞いていないが、峰なら美術大でもやっていけそうな気がする。


「進路は決めたのか?」
 

突然だったろうか。


峰はきょとん、とした顔で進路? と聞きなおしてきた。


「そう、進路だ。進学するのか?」
 

もう一度尋ねると、大きく頷く。


「カノンちゃんから見たら、笑われるかもしれないけど。M美大に……行きたいんだ」
 

M美大か。ここら辺では有名な美術大だ。


わりと著名な画家やデザイナーが卒業しているので倍率は高め。結構難しいかもしれないが……。


「頑張れば行けると思うぞ」


「本当?! じゃああたし、頑張っちゃう!」


ファイトーいっぱーっつ! と叫ぶ峰。


ま、やる気が出たならいいことだな。


止めていた手を動かして、また絵筆を走らせる。


峰は暑いねー、と窓のほうに歩いていった。


窓の外からは、相変わらず水音が聞こえる。


ここ数日、美術室で作業をしている間、その水音が途切れることはほとんどなかった。