「今日も早起きしたんですね、先生」


日陰で重箱を並べ、あたしは向かいの先生に箸を渡した。


なぜ、今日もお弁当を作ってきたかというと。


……ちょっとうれしかったから、かな。


昨日、先生が「こんなうまい飯食ったの、久しぶりだ」って言ったから。


柄にもなくまた作ってあげよう、なんて思っちゃって。


帰り際にこれまた運良く先生と会って、明日も作ってきます、って言ったら遠慮しながらもうれしそうな顔をしてくれたから。


だから、今日も朝からちょっとがんばっちゃったんだと思う。



「ほんとによかったのかぁ? 詫びは昨日ので充分だったんだぞ」



まだそんなことを言ってる。


もう作ってきちゃったんだから、いまさらなのに。


「いいんです! ほら、食べますよ」


いただきますっ! と手を合わせてさっさと食事を始めてしまう。


筋肉が綺麗についていて、体をきちんと作ってあるみたいだし、なにか運動でもしてるのかも。

ちろちろと先生の体(うわ、我ながらいかがわしい言い方だ)を見ていると、先生はそういえば、と話を振ってきた。


「は、はい?」


慌てて視線を上げる。


べ、別に変な意味で見てたわけじゃないんだからね。


「『今日も早起きしたんですね』って言ってたけど、なんでそう思ったんだ?」



いや、ほんとにうまいと言いながら、先生は結構な量を食べる。