「俺?」


自分を指差すジェスチャーをすると、そうだと言わんばかりに大きく頷いた。


教師を呼びつけるとは不遜な奴め。


……まあ、タオルも返さないといけないしな。


了解の意を、腕で作った大きな丸で示したあと、タオル片手にプールへ向かう。


直射日光が容赦なく降り注ぐ。


じりじりと肌が焦げそうだ。


プールサイドに入ると、さっき見た位置に菊池はいなかった。


くるりと見回すと、更衣室の前の日陰に座っていた。


菊池の前には、重箱が二つ並んでいる。


正方形の漆塗り。


正当なる重箱の中には、片方におにぎりがぎっしり。


もう片方には色とりどりのおかずがぎっしり。


「……お前、その量全部食べんのか?」


女子高生が食べる量では決してない。


心配になって聞いてみると、すぐさま失礼なっ! と返ってきた。