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今日の月は暁月だ。
私は真っ赤な林檎をテーブルに起き、窓の先にある月を眺める。
眺めるのが目的でなく、
「白雪。こんばんは」
この殺人鬼を待つのが目的だ。
死のうと思えば、昨日彼が去ったあとリンゴを食べればよかった。
けれど、私はそうしなかった。
きっと、それはこの男のいう私を壊すというのが気になったから。
とても興味深いものだったから。
「ねぇ、どうやって私を壊してくれるの?」
私を楽しませてよ。
冥土の土産を作ってちょうだい。
「ははっ。そんなに壊れたいの?」
「えぇ」
「そう思ってるところからして、白雪は壊れていると思うけど」
「なら、私を壊してくれないの?」
そんなの、嫌だ。
この男は私の期待を裏切らない。
「まさか。ぐっちゃぐちゃにもっと壊してあげる」
静かに口角をあげて、嫌いに微笑を浮かべた。
「白雪」
「何?」
「枕の下。なんか仕込んでない?」
「あら、何で気付くのかしら」
この男、ほんと面白い。
枕の下から取り出したのは、昨日この男が持ってきたナイフと同じくらいの大きさのナイフ。
「私が一方的に壊されるなんて癪だわ。あなたも一緒に壊れてもらうわ」
「ははっ。君って本当に面白い」
「それはどうしたしまして」
「けれど、」
「けれど?」
灰色の瞳は月光を浴びて、綺麗に煌めいていたはずなのに、今は闇に包まれている。
怖い。初めて、この男に恐怖を抱いた。
「壊すのは、俺だけで十分だ」
「………ぅ、…………ッ」
首に巻き付く彼の指。
酸素を欲して、大きく口を開けば彼の力は強くなって、苦しくなる。
彼の爪が皮膚に食い込み、息苦しさでなく痛みも伴う。
「…………、ぁ……」
意識が飛びそうだ。