“歪んでいる”?“狂ってる”?
やだなぁ。これが私の正常なのよ。
もう息をしなくなって、動かなくなった彼。
あとは冷たくなっていくだけの林檎。
もうペン回しのように手元でナイフを回すことのない彼の手。
静かに月のように笑うことのないかれの顔。
綺麗な灰色の瞳を見せてくれない瞼(まぶた)。
柔らかい声を紡ぐことのない口。
あぁ、すべてが。
「とっても美しいわ」
どうしようもなく“死んだ”林檎が愛しい。
私は生きている林檎より死んでいる林檎の方が神秘的で好き。
生きてる人間なんかより死んでいる人間の方が好き。
だって、そういう生き物なのだ。
────魔女という生き物は。