……てか私、本当にこの格好で来てよかったかな?
百合は、黒い髪を今日はポニーテールにしてある。
そして、水色のワンピース。
レースとかはないけど、ところどころにリボンがついていてかわいい。
蓮くんと正弘は、少しロゴの入ったTシャツにジーパンって感じだけど、
二人とも一緒に住んでないはずなのに格好って似るんだな~……。
私の長くて茶色い髪がストレートだったら巻いたりしたかったのに、私は生まれつき少しウェーブがかかっている。
それをストレートにしてもよかったけど、たぶん百合はストレートで来ると思ったから、普段と変わらずに髪を下ろしているだけ。
「美琴、おいで」
ボーッとしていた私に気づいたのか、正弘くんが呼んでくれた。
正弘くんは、こっちに手を差し出している。
こ、これは……手を繋ぐっていう感じ……?
少し恥ずかしかったけど、私は、そっと正弘くんの手の上に自分の手を重ねた。
―グイッ
「わっ!?」
急に正弘くんに引っ張られて、思わず正弘くんに抱きつくような形になってしまった私。
「ごめん正弘くんっ……」
「かわいい」
え……
なに、今日はなぜか、いつも以上にドキドキしちゃう。
「なに赤くなってんの? ほら、行くよ」
「あっ、赤くさせたのは正弘くんじゃん……」
こんな会話、本当にカップルみたいで照れくさい。
「美琴さあ、また“正弘くん”に戻ってるけど?」
「だって……正弘くんの方がいいんだもん」
今まではけっこうお兄ちゃんっていう感じで接してきたし、今さら呼び捨てなんて、私にとってはハードルが高すぎる。
「美琴ー正弘ー遅いよ!」
私たちとは少し離れたところで百合が手を降っている。
「ごめんね、今行く!」
私はこのときから、少しずつ正弘くんに惹かれていたのかもしれない。
だけどそれに気づくのは、もう少し先のお話。