――……

「いやああああああぁぁ!!!!!」



「美琴ー! なに騒いでるの!? 近所迷惑でしょ!」


……やった、やってしまった。

さっきまで8時を指していたはずの時計は、なぜか12時25分を指している。

「あと5分……! やばいって早く行かなきゃ!」

昨日時間をかけてやっと決めた服は、すぐそこのハンガーにかけてある。

胸元のレースが特徴の白っぽいオフショルに、薄いピンク色のキュロット。

少し甘すぎるかなあ……何て思ったりもしたけど、思い切って挑戦してみることにした。

それからメイクとかしてたら、あっという間に12時30分を回ってしまった。

結局家を出たのは10分過ぎ。


あー……遅れちゃった。もうみんないるよね……。

集合場所は、四人で帰るときの別れ道。

家から徒歩で5分ちょっとくらいだけど、私はその道を全力で走った。


これじゃあがんばって整えた髪も台無し。

だけど、そんなことを気にしている暇はない。


やっと集合場所が見えてくると、3つの人影が見えた。

私は大きく手をふりながら、その場所まで走る。

「はあ……はあ……ごめんね! 遅れて……」

「もー! 15分遅刻!」


百合が怒った素振りでそう言った。

「まあまあ。走ってきたんでしょ? いい子いい子」


優しくフォローしてくれた正弘が、私の頭を撫でながら、ぼっさぼさになった髪を直してくれる。

体育祭の時 教室で寝てた私の頭を撫でた人と似ている、温かくて大きな手だった。


けど………


「もー! 頭撫でないでよー! これ以上小さくなったら私生きていけない……」

背が高い人に頭を撫でられるのは、どうしても子供扱いをされているような気分になる。


「いいんじゃね? ちっちゃいの。


かわいーじゃん」


―ドキッ……


初めて蓮くんと話したときに蓮くんが言ってくれた言葉と重なる。


「じゃあ、もう行く?」


私はまだ少し胸がドキドキしていたけど、蓮くんがそう言ったからみんなでショッピングモールへ向かった。