――……

「百合~! なに着てけばいいの!?」


そんなこんなで今日は土曜日。

ずっと何を着ていこうか考えていたけどどうしても決まらなくて、百合に泣きついているところだった。

『はぁ……そんなの正弘の好みに合わせればいいだけじゃん』


電話越しにでも、百合がため息をついているのがわかる。

でも、それも仕方ない。

だって私は、ここ数日毎日のようにこうして百合に泣きついているのだから。

「そうは言ってもさ~……第一、正弘の好みがわかんないの!」

『えっ、ちょっと美琴、そんなことも知らないで付き合ってたの!?』

そんなことって……まだ付き合いはじめてから一週間ぐらいしか経ってないし……。

てか、ニセモノ彼氏、だし。

そう、ニセモノなんだ。彼氏じゃないんだ。

彼氏じゃない……。

彼氏じゃないのに、なんで私はこんなに必死になってるんだろう……?


『おーい、美琴?』

「あ、ごめん」

彼氏なのか彼氏じゃないのか、最近はよくその事を考えてしまって、ボーッとすることが多かった。

『ん~……正弘の好みかあ……。

強いて言うなら、ふわふわ系?』

ふわふわ……系……?

「ふわふわ、って……なにそれ! 私絶対似合わない……」

『いや、わかんないけど。

幼なじみでなに系がタイプとかそういう話しないから、勘だよ。


てか蓮がふわふわ系好きだから、双子の正弘もそうなのかな~って思っただけ』


蓮くんの好み、百合はちゃんと知ってるんだ。

付き合いはじめてからはお互いになんの躊躇もなく呼び捨てだし、すっかりカップルみたい。

いや、カップルなんだけど……。


私たちの方が、カップルにはほど遠いなあ……。



――……

ピピピッ……ピピピッ……

「んー……今何時~?」

日曜日。結局昨日は服を選ぶのに時間がかかってしまって、寝るのが遅かった。

重たいまぶたをこじ開けてぼやける視界の中見える私の目覚まし時計は、ちょうど8時を指していた。


集合時間は12時30分。


まだまだ時間はあるんだ。もうすこしくらい寝ても大丈夫だよね。