「美琴ちゃん」
「なに……?」
「ひとつ、俺のお願い聞いてくれる?」
やっぱり正弘くんはあの笑顔のまま。
もしそのお願いを聞くことで正弘くんが本当の笑顔で笑えるようになるのなら――……
「いいよ、話して!」
私にできることはやってあげたい。
「俺と………付き合おう?」
……………えっ?
「ご、ごめん! もう一回言って!」
「だから、俺と付き合わない?」
待ってよ……どういうこと?
正弘くんって……百合のことが好きなんだよね?
「なんで……」
「俺さ……もう無理なんだよね。
父親にも捨てられて……自分の好きなやつは義理の弟にとられて。
だから、百合のことは忘れることにした。
美琴ちゃんと付き合って、美琴ちゃんのこと好きになっていけたらいいな
……みたいな」
正弘くんほど重い状況じゃないけど、失恋した身として正弘くんの気持ちはすごくよくわかった。
私も、できれば蓮くんのことなんか忘れて正弘くんのことを好きになれたら
どれほど楽なんだろうって思う。
「それにさ、俺らが付き合えば連たちも、“ああ、もう美琴ちゃんも正弘も
俺らのこと吹っ切れたんだ”って思えるんじゃないかな……」
……そっか。
私と正弘くんがずっと想い続けるのは、蓮くんと百合にとって重荷になっちゃうんだ――……