*美琴side*


「うっ……ひっく……」

「泣くなよ」


知らなかった。正弘くんにそんな過去があったなんて。

いつも優しく笑ってる正弘くんだけど、本当はそんなことをずっと一人で抱え込んでいたんだ……。

「だって………なんで……言ってくれなかったの……」


もっと、早く言ってほしかった。

私はいつだって、力になったのに。

きっと私なんかじゃ力になれないかもしれないけど、全力で正弘くんや蓮くんを支えたのに。


「ごめん。……美琴ちゃんが、そうやって泣くと思ったから……」


正弘くんは自分のことで精一杯なはずなのに、必ず自分のことよりも周りのことを優先するんだ。

「私……全力で支えるから、これからはなんでも言ってよ……!」

「でも、蓮の方が苦しんでるよ?」

笑顔でそう言った正弘くんだけど、目は少し悲しそうに見えた。


「蓮くんには……百合が、いるから……」


私がそう言った瞬間、自分が最低なことを言ってしまったことに気づいた。


これじゃ……仕方なく正弘くんの隣にいるみたいじゃん……!

「まっ正弘くん! 違う! そうじゃなくて……」


正弘くんは、かすかに笑みを浮かべて私の頭をポンポンと撫でた。


どうして、今まで気づかなかったんだろう。

正弘くんの笑顔は、優しくて、穏やかで、安心するって思ってた。


でも……違ったんだ。ただ……心の底から笑うことができなくなっただけなんだ……。