――……


「………海……」


私が向かった先は、海だった。


「私、小さい頃からここに来るのけっこう好きだったんだよね。


屋上から見る空もすっごいきれいだけど、海だって負けないくらいきれいでしょ?」


正弘くんは、なにも言わずにこくりと頷いた。

私は、その場で静かに座る。


「正弘くんも座りなよ」


私がそういうと、正弘くんもうつむきながら座った。


「……」

「……」


私と正弘くんの間には沈黙が続いて、ただ波の音が聞こえるだけ。

お互い無理に話そうとしないし、二人とも何か考えるようにして波の音を聴いていた。


「俺と蓮の過去……って、知ってる?」


ふと、正弘くんが口を開いた。


「過去………?」


「蓮の過去を勝手に話すわけにはいかないけど、俺の過去なら聞く?」


今まで、蓮くんと正弘くんの過去について触れたことは一度もなかった。

あの体育祭のとき、二人には何かあるんだろうなとは思ってたけど、なんとなく……触れちゃいけない気がして。


「そんなの聞いていいの……?」

「俺自身、話した方がスッキリすると思うから」


たぶん、言い話ではないだろう。

だけど……今まではずっと正弘くんに助けられてきたから、今度は私が支えてあげたい。


「わかった。なんでも聞く!」


勢いよくそう言った私に、正弘くんは“ははっ”と、苦笑いをした。