でも、もういいの。
私さえ我慢してれば……それで済むんだから。
「美琴ちゃんがいつも泣いてるの、知らないと思った?」
正弘くんのその一言で、百合も、蓮くんも、そして私も、驚いて目を見開いた。
だって、……なんでそれ、知ってるの?
誰にも見られないところで泣いてたのに……。
「なんで……泣いてたんだよ」
蓮くんが、さっきの表情のまま今度は私に視線を移した。
「……っ、泣いてなんか……」
さっきまでは嘘つきまくってたくせに。
こればかりは、どうしても嘘がつけなかった。
確かに、私は毎日のように泣いてたよ。誰もいない、校舎の裏側で。
嘘をつくことは簡単だけど、その事を否定すると私の思いまで気づかれないような気がして……。
私がいつも苦しんでたこと、悩んでたこと。
なかったことには、されたくなかった。
「ほんとなの……? 美琴……」
「………そう、……だよ。正弘くんに………バレちゃってたんだね」
私は、涙を隠すようにヘラッと笑う。
「な? わかっただろ、蓮。
お前がはっきりしないせいで、美琴ちゃんがどんだけ苦しい思いしてたか想像できるか?
ずっと……一人で抱え込んで……」
正弘くんには、伝わってた。
ずっと知らなかったけど……正弘くんだけは、私が苦しかったこと、気づいてくれてた……。
もう、それだけで充分だよ……。
「ありがとう………正弘くん……」