「はぁっ……はぁっ……っ……なに、考えてんだよっ……。」

「っ……お前の、弱味をつかもうとしただけだ……お前の意見なんて知らねぇ……俺はシたくてしてるだけだ……だから、おとなしくしてろっ……!」

「あっ!よせっ……!」

俺は再度黒永のものをくわえた。少し歯を立ててやったら、黒永は抵抗するのをピタッとやめて身体を強ばらせた。

「ひぐっ……コウっ……やめて…くれ……おかしくなるっ……っ……。」

吐息混じりに苦しそうな声で言う。しかし、構わず俺は肉棒を吸いあげた。黒永は声をころし、襲いかかる快楽に身を震わせた。

「うぁっ……!……く…っ……はぁ…ぁ……んっ……!」

舌で尖端を遊ばせ、上下に動かし、裏筋を舐める。少しずつ大きくなるそいつは、もうそろそろ限界だろう。黒永がなにも言わなくなり、口を押さえてひたすら声がもれてしまうのを耐えていた。

「ふっ……っ…ん……くっ……んん……!」

『もう……そろそろか?』

俺は口を離して黒永のものを握った。

「いっ……!」

「っ……はぁ……イきそうか?涙目だぞ?」

俺はニヤリと笑って見せた。あのときのように、黒永にも同じ思いをさせてやりたいのだ。

「っ……。」

「イかせてってちゃんと言えたら、イかせてやってもいいぜ?」

「……はっ……そういう…ことかよっ……。」

「ほら……震えてんぞ?もうそろそろ限界なんじゃねぇの?」

途切れ途切れに言うと黒永は苦笑いをした。その今にも意識が飛びそうなのを必死で堪える顔に、背筋がゾクゾクした。俺も大概な性癖の持ち主だと実感した。俺はさらに手に力を込めた。黒永は痛みに苦い顔をした。すると、黒永は俺の頬を包み込むように触った。

『は……?』

握っていた手が緩まりそして、予想外な行動に出る。

「っ……はぁっ……コウ……。」

「んむっ……!?」

黒永は俺の唇に優しくキスをした。見事な上目遣いで、涙を溜めた目でこちらを見る。

「んっ……イかせて…くれ………っ……。」

「っ!!?」

全く予想もしていなかった。言われたこちらが恥ずかしくなってしまって、硬直してしまう。するとそれを見越したのか、黒永はしたり顔をする。

「慣れないことっ……すんなよ……顔、真っ赤だぜ?俺の演技力……なめんな……。」

「っ……このっ!」

「んぁっ!……痛っ……卑怯なこと……するじゃねぇか……っ……人のチンコ握り潰してっ……!」

思わず力んでしまって、黒永のものを強く握ってしまった。それでもこいつは、余裕があるように見えて、少しムカつく。

「うわっ……!?」

黒永は空いていた手で俺の下肢へ触れた。すると、俺のものも熱を帯びていたことに気がついた。

「はっ……勃ってる……この…ド変態……。」

「っ……チッ……!」

「どうするんだ……この、野郎2人でおっ勃ててる状況……コウの…せいだからな……。」

「っ……。」

確かに黒永の言うとおりだ。こんな状況にさせたのは紛れもない俺であり、仕掛けたのも自分。しかし、上へ先に立たれたのは黒永だった。こいつの方が1枚うわてだった。

「はぁっ……どうするんだっ……一緒にっ……ヌくか……?それともっ……俺が、口で……してやろうか……?」

相変わらずの荒い呼吸で話すが、余裕など無いはずなのに、どうしてそこまで出来るのかが理解出来ない。黒永の忍耐力と言えばいいのか余裕と言えばいいのか、これにはかなり驚いた。

「っ……2人で……しよ……。」

改めて口に出すとかなり恥ずかしい。

「……ふっ……素直じゃ、ないな……。」

「うるせっ……!」

「はっ……出せよ……お前のもっ……。」

そう言うと俺のズボンに手をかけて、下ろすようにベルトへ触れた。

「分かってるっ……!」

「……じゃあっ……勝負でも、しとくか?」

「はぁ……?」

「ヌき勝負……先にっ……イった方が負け……この方が、おもしろいだろっ……?」

「……はっ……上等だっての……!」

俺と黒永はお互いのものを触り、快楽に襲われる。

「あっ……っ……はぁっ……く……っ!」

「ふっ……くぅ……んっ……はっ…ぁ……。」

手を早く上下させ、お互いに息をころしながらする。ふと、黒永の表情をうかがおうと思い、顔を見た。

「ぁ……っ……ふっ……んっ……はぁ…あっ……!」

『こいつっ……。』

見ると、先程よりも辛そうな顔をしていた。目をつぶって、奥歯を強く噛み締めるような、さっきまでの余裕な姿とはまるで違う。

「っ……エロ……。」

思わず口に出してしまった。

「……お前がっ……言えたことか……はっ……。」

汗でドロドロになりながらも、余裕があるように見せる黒永。

「っ……へっ……うっせ…っ……。」

しばらく耐えていた。が、そろそろ自分も限界が近い。それは向こうも同じ思いをしているだろう。俺よりも長く耐え抜いた黒永に少し尊敬心が芽生えるほどだ。

「はぁっ…あっ……くぁっ……はっ……あぁ……!」

『声が……。』

黒永は少し手が厳かになっている。もう本当に限界なのだろう。しかし、それは俺も同じだった。

「はぁっ……なかなかっ……勝負、つかねぇなっ……。」

「っ……ふっ……コウっ……。」

「あ……?」

「……引き分け…だ……そろそろ……無理…だ……なぁっ……一緒に、ヌかねぇ……?」

声も手も震えている。目はほとんど開いていない。これ以上耐えたら体にも悪そうだ。

「っ……あぁ……。」

その後、2人で一緒にすることにした。

「うぐっ……ふっ……あぁ…ぁっ……はぁっ……!」

「くっ……あっ……はぁ……いっ…あぁ……!」

グチュグチュと滑りの良くなった手の動きは激しさを増し、声も抑えることが難しくなる。

「あぁっ……い…イくっ……うっ……あっ────!」

「はぁっ……あっ……うっ…く……っ────!」

俺達は同時に熱をぶちまけた。

「はぁっ……はぁっ……あっ……はぁ……っ……。」

「はっ……はぁっ……はぁっ……っ……はっ……。」

2人の手には白濁で独特な香りを放つものがたっぷりと注がれていた。ポタポタと床にたれて、水気のある音が部屋に鳴り響いた。俺らはしばらく放心状態でいた。荒くなった呼吸を整え、心拍数を落ち着かせようと努力する。俺は目がチカチカして、今にもぶっ倒れそうだ。でも黒永の方が心底辛かっただろう。

「……っ……雨……。」

「っ……?」

肩で息をして、汗と涙でぐちゃぐちゃの顔をこちらへ向けた。

「……あっ…ありがと……付き合ってくれて……。」

「……。」

黒永は意識がボーッとしているようで、聞いているのか定かでないように見える。少し笑って、汚れていない手を俺の顔へ近づけた。しっとり汗ばんで冷えた手が、熱で熱くなった顔に触れる。

「……可愛い、かった……。」

「んむっ……ふっ……。」

黒永はそう呟くように告げると、唇を重ねた。こうもストレートに言われると、小っ恥ずかしいけど嬉しい。

「……掃除、しないとな。」

「悪い……だいぶ汚した……制服、大丈夫だったか?」

「平気だ……。」

俺らはきちんと元通りに片付け、身なりを整えた。

「コウ……このことは、誰になら話せる……?」

「……なんで話す必要が……。」

「コウは全部態度で分かっちまうから、特定の人が分かっていれば、そいつにフォローしてもらえるかと思ったんだ。」

「っ……俺はそんなに、分かりやすいか……。」

『でも……あいつらなら……。』

俺の心はもう決まっていた。端からそのつもりでいた。

「百とヨッシーなら、OKだ。あいつらなら……分かってくれんだろ……多分。」

「……はぁ……これで俺は、晴れてホモだな……。」

「それを口に出して言うんじゃねぇ……。」

「……帰るか。」

身支度を済ませて、生徒会室の戸を開ける。

「……もうこんな時間か……。」

腕時計を眺めて呟いた。そろそろシゲに電話して迎えに来てもらわないと、怪しまれてしまう。

「……誰もいないな。」

廊下は薄暗く、雨はすっかりあがっている。美しい三日月が、雲の間から覗いている。

「コウ。」

「ん?」

「……て。」

「……なに?」

「……手……繋ごう。」

俺の小指をつまむように掴んで、黒永は言う。

「なっ……なんで繋ぐ必要あんだよ……。」

「一応、付き合ってるんだし……これくらいいいだろ……誰もいないんだし……ね。」

そういう風に言われてしまうと、逆らえない。月明かりに照らされた黒永の顔は、幸せそうで、優しい。柔らかく包み込まれた手は、じっとりと汗でぬれてしまう。

『やっべぇ……手汗やべぇ……。』

「……さっきまであんなに威勢よかったのに、こういう普通なことで緊張すんのか。」

「っ……いいだろ……別に……。」

少しすねてみた。こういうことに関しては確かに素直になれない。それをいいことに黒永の天然Sっぷりは素晴らしい。

「可愛いいな、コウは。」

「……チッ……男に可愛いいとか、言ってんじゃねぇっての……。」

帰り道、恋人繋ぎで校門を出た。黒永に手を振り、車に乗せられ家へと帰った。

『……可愛いい……か……。俺にとっちゃ……お前の方が……。』

そんなことをモヤモヤと考えながら帰宅する。黒永との別れ際、俺達の近くで怪しい動きがあったことを知らずに……。